登ったら降る。

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「坂」
登るときには希望があって、
降りるときには・・・勇気がいる。
まっすぐで平坦な道は退屈だ。
私は起伏にとんだ道がすき。
 
これはロシア語通訳、作家として活躍された米原万里さんの言葉。
厳しい闘病生活のときに残された言葉です。
病と闘うこと。それは時に死と向き合うことにもなる。
そんな中で人生の終焉に向けてどのように坂道を降って行くのか。
“降りるときは・・・勇気がいる。”
自分の意見をしっかりと持ち、それをゆるぎなく発言してきた彼女の強さが出ているけれど、
その強さの裏側にある不安も感じられ、何か重いものがずしりと心に響きました。
 
五木寛之さんは人生を登山に例えておられました。
山に登れば降りがある。降り方を考えること。これからはそこが大切なのだと。
バブル崩壊後の不景気や少子化の日本の行く先にも当てはまるとも仰っていたような記憶があります。
 
最近、音楽界に大きく貢献された方々がこの世を去りました。
音楽の世界に身を置きながら人生という山を登った方々。
演奏や執筆、作曲などをする中でどのような山道を歩いて、そして降ってきたのか。
残された作品が私たちにその足跡を語ってくれることでしょう。
 
山。坂。ニーチェは“河”と言った。
人や社会を自然に例えるのはなんと多いことか。
人間社会のあらゆる答えが自然の中に眠っているということでしょうか。
 
それにしても“下り坂”というもの。
“降り”を思い描けるときとは一体いつなのだろうと考えたりするのだけれど・・・
それがまだわからないというのは、降りが見えるほど坂を登りつめていないということで・・・
 
まだまだ未熟者です。