コール・ピッコラ第10回記念公演・オペラ『雨情とひろとお月さま』は7月18日、無事に終演いたしました。満員のお客様にご来場いただき、また沢山の拍手も頂きまして、出演者一同大変嬉しく本番を終えることができました。ご来場、ご声援、本当にありがとうございました。
まだ雪の残る早春から稽古がスタート。小学3年生から80代の大人まで、総勢100名超の出演者が心を一つに作品に向き合ってきました。音楽スタッフの熱意、それに真剣に取り組むメンバー、何より作曲の岩河智子さんによる深い表現への追求は最後まで私達を引き締めてくれ、本番ではそれぞれがいい緊張感で望むことが出来たように思います。
この作品の特徴は具体的なセリフがほぼ無いこと。ストーリーの経過は語り手に委ねられ、各キャスト、アンサンブルは野口雨情の詩をどのように歌うか、演じるかで状況を描いてゆきます。それが難しいところでもありましたが、心情や風景を描く岩河さんのメロディーが素晴らしく、また納得のいくもので、雨情が選んだ言葉、生み出された詩がより味わい深く感じられました。
ひばりのように自由を求める雨情、苦悩の末にそれを受け止め、離れる決意をしつつも雨情の創作を幸せに思う妻のひろ。このような結末は、繊細な心のひだを感じ、受け止められる日本人の研ぎ澄まされた感覚あってこそ味わえるものなのかもしれません。歌う側も客席で観る側にも。諸外国の人々が繊細じゃないというのではなく、日本人だからこそ受け止められる心理、落としどころ、あるいは着地点みたいなものがあるように感じられるのです。
昨年の栃木県さくら市での初演に続いて今回は2度目の公演でした。またどこかで再演され、たくさんの人にご覧いただけることを願っています。