piccola: 2020年10月アーカイブ

 「史上最大の作戦」「愛と哀しみのボレロ」「ダイ・ハード」…ベートーヴェンの楽曲が使われた映画は数知れず。日本では黒澤明監督の「赤ひげ」で第九のモチーフが使われていますが、黒沢監督はフルトヴェングラー指揮、バイロイト祝祭管弦楽団のレコードを手にし、“このような感じで”と具体的に提案したとか。またテレビでは第九や運命の旋律が頻繁に使われ、今では効果音に近い存在かもしれません。

  さてこの曲にもベートーヴェンのモチーフが…「夢見るシャンソン人形」。セルジュ・ゲンスブールが作詞・作曲し、フランス・ギャルが歌って大ヒットしたフレンチポップス。日本人歌手も岩谷時子さんの訳詞でカバーしヒットした曲です。この冒頭のテーマ“わたしはかわいいシャンソン人形♪”の部分、なんとベートーヴェンのソナタの引用なのです。少しコアな部分ですが、ピアノソナタ第一番四楽章の一部分。第二主題のあとに出てくる、終止のための主題(ちょっとややこしい)。こんな部分をポンと持ってくるとは、しかもポップに仕上げるとは!ヒットメーカーという人たちの豊富な情報量と関心の広さ、そして自在に表現にはめ込んでいく才能に改めて脱帽です。